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特別展「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト」 レポート 名古屋市美術館

特別展「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト」
― 写真、絵画、グラフィック・アート ―

名古屋市美術館


2012年 2月11日(土・祝)― 3月25日(日)

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【概  要】
20世紀のアメリカを代表し、社会派の作家として知られるベン・シャーン(1898-1969)の芸術を、絵画、素描、版画、ポスターなど約200点とオリジナル50点にデジタルイメージなどによる約250点を加えた写真によって紹介します。日本では1991年以来約20年ぶりの回顧展です。
本展は、シャーンの創作において重要な役割を持ちながら日本ではあまり紹介されることがなかった写真作品に光を当て、あるイメージが絵画や素描、版画、ポスターなどの表現手法において多様に変化して用いられ、豊かな表現世界を生み出していることを作品に即して紹介します。



【見  所】
(1) 初期から晩年までの代表作品を含む名古屋ではじめて開催される本格的な回顧展。
(2) 海外(アメリカ合衆国のみ)借用作品のほとんどが日本初出品。
(3) シャーン撮影の写真、書籍やレコードジャケットなどの商業デザイン作品を多数紹介。
(4) 日本滞在時に撮影した写真の初紹介をはじめ、日本とシャーンとのかかわりを作品や資料で紹介。





ベン・シャーンは「社会派の作家」というのが、
展覧会を見る前に強いイメージとしてありました。
同じく「20世紀のアメリカを代表する作家」としても知られていますが、
戦後のアメリカ美術は抽象表現主義によって美術界の中心となります。
そうした流れがある中で、シャーンはどのような活動をしたのかも、
興味ある点でした。

【章展開】
本展最大の注目としては、写真家としてのシャーンにスポットを当てています。
また、クロスメディア、日本との関係にも重点的な紹介がされています。
章展開としては第1章「ドキュメンタリー、そして社会への告発」
第2章「『私』から共感へ」 第3章「文字への愛、神話の力」
第4章「アジア、そして日本へ」という構成になっています。

【写真と絵画】
クロスメディア・アーティストと題するだけあって、
表現方法が多岐にわたり、見どころもたくさんありますが、
まず注目は、写真と絵画が横に並んで展示されている点でしょう(第1章、第2章)。
絵画は写真をもとに描かれていますが、その通りに描いているわけではなく、
シャーンのならではの視点により表現されており、その違いを見比べると
非常に興味深く見ることができます。


【絵画作品】
ここでシャーンの絵画作品について。
その後の第3章にて展開されるポスターなどのグラフィック系の作品は、
時代の先駆のようで、クロスメディアと言われるだけの存在感を示し、
本展でも重要な作品群ではありますが、絵画はそれ以上にすばらしい作品の数々だと思います。
具象絵画であり人物がメインに描かれていますが、
親しみやすいフォルムや表情、しぐさから現実を見据えるまなざしと温かさが感じられるのです。
また、色の使い方がとてもセンスがよく、独自の色彩感覚を感じます。
これはグワッシュという不透明水彩絵具を使用している効果もあるかと思います。

■ 『グワッシュ(仏)』
不透明水彩絵具。透明に対して、つやの少ない強い発色の色面。

■ 抽象表現主義との関係
冒頭に述べたように、戦後アメリカ美術は抽象表現主義が台頭してきますが、
シャーンの具象絵画は対極を成すかのようです(文字が描かれている絵画もあり)。
ただ、1940年代後半からの絵画には背景が抽象化してきている作品も見受けられ、
興味深い点でもあります。
但し、デ・クーニング、ポロックなどの前衛画家たちには一応尊敬の念を払いながらも、
ポロック以降の亜流作家たちには嫌悪感を抱いていたようでもあります。
同時に、1951年頃は抽象表現主義の台頭に対し、自らの表現を模索している時期でもあり、その象徴的作品が《ワルシャワ》1952年にて表現されているかのようです。


【ベン・シャーンの言葉】
図録に「ベン・シャーンの言葉」としていくつか掲載されていますが、
例えば《シンポジウム「ゲルニカ」をめぐって》よりでは、
ピカソの「ゲルニカ」に対するシャーンの回答が記載され、非常におもしろいです。


【特に印象に残った作品】
《解放》1945年 第二次世界大戦のフランス解放のニュースを聞いて描かれた作品。
とてもとても心に染み渡ってきます。
画像ではご紹介できませんが、フライヤーに掲載されています。
本展にて、ご覧いただきたいと切に願います。


【日本との関係:第五福龍丸事件】
第4章のテーマであり本展の白眉でもあります。
1954年3月1日アメリカの水爆ブラボーの爆発実験に遭遇し、23名の乗組員全員が
死の灰を浴びた事件。
シャーンは、「ラッキードラゴン」シリーズを1957年から1962年頃まで描きました。

本展のラストに代表作の「ラッキードラゴン」1960年、その横に「なぜ?」1961年が展示されています。
先の《開放》1945年も含めて、このシリーズ作品から様々な感情が湧いてきました。
日本を愛したシャーン。
本展覧会が今開催される事の数奇な運命。

最後に、ベン・シャーンの作品を通じて感じられたのは人間愛です。
どのような表現方法、社会、個人でも、絶えず人間を主題として表現し、
その現実を見据えた温かいまなざしがあったからこその存在なのだと思います。




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【関連イベント】
■ 記念講演会 「ベン・シャーン 不変の良心」
日時: 2012年3月4日(日) 午後2時~4時
講師: ロジャー・パルバース(作家、劇作家、演出家)
*日本語による講演
場所: 講堂(入場無料、定員180名、先着順)


■ 解説会
日時: 2012年3月17 日(土) 午後2時~4時
講師: 角田美奈子(名古屋市美術館学芸員)
場所: 講堂(入場無料、定員180名、先着順)


■ ギャラリートーク
名古屋市美術館ボランティアが参加者のみなさまに意見をうかがいながら展覧会を楽しむトークを行います。
開催日
[2月]
28日(火)、29日(水)
[3月]
2日(金)、3日(土)、6日(火)、7日(水)、8日(木)、9日(金)、
13日(火)、14日(水)、15日(木)、16日(金)、18日(日)、20日(火・祝)
開始時間: 10時30分~/13時30分~(約60分)
※要入場券
※都合により休止する場合がありますのでご了承ください。




【データ】
会  期: 平成24年2月11日(祝・土)~3月25日(日)  (開催日数38日)
開館時間: 午前9時30分~午後5時 (金曜日は ~午後8時) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:  毎週月曜日

入場料:  一般 1,100円、大学・高校生 800円、小・中学生 500円
        ※この展覧会入場券の半券で常設展も鑑賞できます

会  場: 名古屋市中区栄二丁目17番25号(白川公園内)
      名古屋市美術館 企画展示室1・2

主  催: 名古屋市美術館、読売新聞社、中京テレビ放送、美術館連絡協議会


本展情報サイト

名古屋市美術館 公式サイト


■参考・引用=本展覧会図録

取材・撮影: 美静



■ 画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
転用等はご遠慮ください。


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所蔵企画展 ひかり 絵画にみる光の表現 展示写真レポ メナード美術館

所蔵企画展 ひかり 絵画にみる光の表現

メナード美術館(小牧)


2012年 1月2日(月)― 4月1日(日)


【見どころ】
私たちのまわりは多くの光に満ち溢れています。生命を育む太陽の光、夜をやわらかく包む月明かり、星の煌めき。電灯など現在の人工的な光には、夜でも昼間と同じように活動できるほどの明るさがあります。

美術の世界でも、多くの画家たちが光を題材に、さまざまな表現の作品を生み出しました。金銀などの装飾効果を用いることで作品自体から光を感じる絵画もあります。

この展覧会では、所蔵の西洋絵画、日本画、日本洋画、工芸より、光を描いた作品や、輝きを感じさせる作品約70点を展示します。初公開のピエール・ボナール《青いジレを着たブロンドの女》は、柔らかな光と色彩に満ちた作品です。フランスの巨匠ボナールは身近な日常を題材とした光あふれる室内風景を多く描きました。

東日本大震災の影響による節電対策で、光のある暮らしの大切さが痛切に感じられるようになり、自然に存在する光の明るさ、美しさの再発見が大きなテーマになっています。2012年の新しい年を迎える今、身のまわりにある「ひかり」についてあらためて考えるきっかけとして、絵画を通したさまざまな光の表現をお楽しみください。


4章構成
■ 「自然の光」
■ 「光の効果」
■ 「室内・暮らしの光」
■ 「工芸にみる光」




■ 「自然の光」
光のイメージとしては暖かいイメージが連想されるかと思います。
展示作品はそのような春や夏の明るい日差しや夕刻時の光もたくさんありますが、
特に印象的だったのが、厳しい冬の光の作品モーリス・ド・ヴラマンク「雪景」。
暗い空から光が差し込み、建物につもった雪を照らす。
この厳かな雰囲気と太い筆跡による真っ白な雪景色がとても印象に残りました。



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クロード・モネ 「チャリング・クロス橋」 1899年

■自然の光と聞いて真っ先に浮かぶのが印象派。
印象派は刻々とかわる光の動き、変化の質感を表現しましたが、
その中でも代表的画家がモネでしょう。

本作を見てもわかるようにモネの絵は臨場感に富み、
時代を経てもその風景の変化が目の前で見て取れるようで、
いつまでも古さを感じさせない新鮮な魅力があるのだと思います。

本作は本章「自然のひかり」を代表する作品でしょう。


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「暁の海」 藤島武二 1931~32頃




■ 「光の効果」
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「画像の展示作品は前期展示作品です。現在(2/14-4/1)は後期展示作品に替わっています。」



■ 「室内・暮らしの光」
本章は室内・暮らしの光りがテーマですので、
静物画や室内画が多数展示されています。

とても素晴らしい作品の数々で、
ピカソ、モランディ、デルヴォー、ビュッフェなど、
錚々たる画家の質の高い作品が並ぶ様は圧巻。
私がもっとも魅了された章でもあります。


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左: ピエール・ボナール 「静物=りんごと水差し」 1931頃
右: ピエール・ボナール 「青いジレを着たブロンドの女」 1922

■本展 最大の注目作品。 
初公開のピエール・ボナール「青いジレを着たブロンドの女」。

ボナールはナビ派に分類され、日本美術の影響を最も受けた画家。
室内をテーマに描く事が多かった事から親密派(アンティミスト)と呼ばれる。

本作に描かれている女性は画家のモデルで恋人のルネ・モンシャンティと思われます。
ブロンドの髪、明るいピンクのシャツと青いジレ(ベスト)の色彩のコントラストに、
光が差し込み照らされたルネのうつむき気味の表情が印象的です。


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小出楢重 「卓上の蔬菜」 1930


【ワークショップ】
■ 3/10(土) 金銀砂子のはがきづくり  申込先着順 各15名

身近な道具を利用して、金や銀の箔で装飾したオリジナルはがきをつくりませんか。
砂子とは、金箔を砂のように細かくしたものです。初めての方もお楽しみいただけます。

時 間: 10時30分~/14時~ いずれか1回 (約90分)
講 師: 同館学芸員
会 場: アネックス・ホール (別館)、展示室
参加費: 800円、別に入館券が必要
対 象: 中学生以上
保護者の方と一緒につくられる場合、小学3年生以上のお子様もご参加いただけます。(参加費800円と、お子様と保護者の方それぞれの入館券が必要となります。)

持ち物: マスク (息で箔が飛ぶのを防ぐため)
ワークショップ中は空調を止めた状態になります。
暖かい服装でご参加ください。

■ 申込方法(下記メナード美術館公式サイトをご覧ください。)
メナード美術館 公式サイト ワークショップページ




【コレクション・コーナー「西洋絵画名作選」】

■ こちらのコーナーもメナード美術館の質の高い充実したコレクションを堪能できます。
ポスト印象派セザンヌから素朴派、フォーヴィスム、キュビスム、シュルレアリスムと
20世紀美術を代表する画家の作品が並びます。

本章でもっともインパクトが強かったのは
ラウル・デュフィ「シシリー島風景」
絵画の中心がパリやドイツ、ベルギーということもあって、
なかなかイタリアの風景画を見る機会がなく、
シシリー島を描いた本作は色彩豊かで、濃厚な筆跡とあいまって
実に魅力的な作品です。


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ジェームズ・アンソール 「仮面の中の自画像」 1899

■ メナード美術館が世界に誇る、アンソール傑作中の傑作。


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ポール・セザンヌ 「麦藁帽子をかぶった子供」 1896~1902頃




【データ】
展覧会名: 所蔵企画展 ひかり 絵画にみる光の表現
会期: 2012年1月2日[月]- 4月1日[日]
( 前期展示:1/2-2/12、後期展示:2/14-4/1 )

開館時間: 午前10時~午後5時 (最終入館は4時30分まで)
休館日: 月曜日(但し1/9は開館)、1/10
会場: メナード美術館
〒485-0041 愛知県小牧市小牧5-250
TEL: 0568-75-5787
主催: メナード美術館

■ 画像の作品は全て前期1/2-2/12の展示作品です。
  前期と後期で作品が一部入れ替わりますので、ご了承ください。


メナード美術館 公式サイト

■ 全作品メナード美術館所蔵


取材: 美静
撮影: こうもりえ


■ 画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
  転用はご遠慮ください。


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畑 温子展  なみうちぎわの魔法  展示写真レポート アートエイジギャラリー

畑 温子展 なみうちぎわの魔法 

アートエイジギャラリー(豊橋)


2012年 1月16日(月)― 2月19日(日)


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「窓」 2012 / 「風」 2012 画像①

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畑温子さんの個展が豊橋のアートエイジギャラリーにて
開催中でしたので、行ってきました。

彼女の作品は、象徴に「模様、紋章、装飾」があるのですが、
本展も大小さまざまな作品で展開。

本展の白眉は画像①の「窓」と「風」でしょう。
一目見て気に入りました
画像では色が上手く出ていませんが、柔らかい色彩と筆使いにより、
立体感が出て、ラインにも装飾的なイメージが施されています。
そして、左「窓」を絡ませ、1つの作品として見せ、
バランス、ストーリーとイメージの創造を感じさせます。

全体の構成や配置がとても個性的。
良い意味で、トータル的なインスタレーション、
連作としても見て取れる世界。
そして、壁面やキャンバスの余白をうまく使っています。
展示の構成や配置は、正攻法や引っ掛かりがないスマートな方法を
とられる事が良しとされる場合もありますが、
本展のように、いろんな思考をさせられる方法も、
これはこれで面白いなと思いますね。

彼女なりに独自の世界を推し進め、世界を確立しようとしている
心意気がビシビシと伝わってきました。
まだ、作品によっては波や未成熟(まだ22歳)なところはありますが、
中にはキラリと光る、とっても素敵な作品を見せてくれるところが魅力であり、
可能性を感じさせてくれますので、
今後どのように進化されるのか楽しみです。


ギャラリーは大きなロフトっぽい雰囲気で、
居心地よく、すっかり長居の爆裂トークで楽しい時間を過ごすことができました♪



■「余白」という意味に繋がると思うのですが、
作品は無着色のキャンバス地に、独自に配合した白色を塗ってから描かれています。


■ 出品中の展覧会  
  現在アートラボあいち「密度Ⅲ」(名古屋芸術大学在校生・卒業生による展示)に
  出品されています。
  会期:1月25日(水)-2月12日(日) 11:00~19:00

「密度III」 名古屋芸術大学在校生・卒業生 畑温子 アートラボあいち 展覧会ニュース



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【畑 温子 Atsuko Hata】
1989年生まれ 

2011年03月 名古屋芸術大学絵画科洋画コース卒業

■ 展覧会
2010年02月 「洋画3年生選抜展」 名古屋芸術大学内 ギャラリーBE
2010年02月 「michikusa5人展」 名古屋芸術大学アートスペースT.A.G IZUTO
2010年11月 「旧加藤邸アートプロジェクト<記憶の庭で遊ぶ>展」
         国登録有形文化財旧加藤家住宅

2011年01月 「Yorimichi 四人展」 愛知芸術文化センター地下2階スペースX
2011年03月 「名古屋芸術大学卒業制作展」愛知県美術館ギャラリー
         名古屋芸術大学 西キャンパス アート&デザインセンター
2011年12月 「旅のしるし展」 ギャラリーヴァルール

2012年01月 個展「なみうちぎわの魔法」 アートエイジギャラリー
2012年01月 「密度Ⅲ」 アートラボあいち



【畑 温子 関連記事】
畑 温子 「旅のしるし展」 展示写真レポート ギャラリー ヴァルール
畑 温子 絵画科(洋画) 2011 名古屋芸術大学卒業制作展
畑 温子 「Yorimichi四人展」 観覧
旧加藤邸アートプロジェクト 2010「記憶の庭で遊ぶ」 鑑覧


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【データ】
会期: 2012年1月16日(月)-2月19日(日)
時間: 10:00-18:00(最終日17:00)
休廊: 会期中無休

会場: アートエイジギャラリー
住所: 愛知県豊橋市向山西町3-2(東海フレーム2F)
電話: 0532-55-9988
交通: 豊橋駅から豊鉄バス3、4番線「商業高校前」徒歩5分



撮影: 美静



■ 画像はご本人の許可を得て撮影したものです。
  転用等はご遠慮ください。


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